Travel to Arizona 12.

『ゴルフショップオカムラのピンUSA本社取材旅行記 その12』

【高い完成度を誇る新ウェッジ『グライド』】
そして今回の新商品の中でもかなり時間を割いて紹介されたのが
グライドウェッジ
このウェッジの登場で2種類の現役ウェッジがカタログ落ちした※1ことを考えると、
ピンはこのモデルに相当の自信を持っていることが伺えますね。

まず「グライド」という名前は「グライダー」から取られている、とのこと。
空を滑空するグライダーのようにソフトでスムース、楽々打てるイメージだそうです。
それでいて弾道は刺すように目標へ向かう、そんなウェッジを目指して開発されました。

そしてグライドウェッジにはもう一つ重要なテーマがあります。
それが「ハンドダウン」です。

新ウェッジ開発にあたり様々なプロを調査した結果、どのプロにも共通していたのが
「方向性を重視する時はグリップを短く持つ」ことだったそうです。
また、調査の結果確かに方向性と距離感が良くなることも判明しました。

そこでピンはまず、一般ゴルファーに対し
「クラブを短く持たせるためのグリップ」を研究・開発。
その結果生まれたのがこの「ダイラウェッジグリップ」です。

グリップ下部の▽マークは、3種類のマークのどれに指を合わせて握るかで、
打ち出し角度とボールの高さを思い通りに操作できる
という機能を果たしています。
もちろん、短く持つことにより方向性・距離感も大幅に向上します。

左のグラフがボールの打ち出し角度、右のグラフがボールの高さを表しています。
青いグラフは通常の位置でグリップを握った場合。
赤いグラフは1段階下のマークでグリップを握った場合。
黄緑のグラフは一番下のマークでグリップを握った場合です。

ご覧頂ければお分かりの通り、短く持てば持つほど打ち出し角は低くなり、
ボールも低く飛び出している
ことがわかりますね。

そしてグライドウェッジには専用シャフト『CFS WEDGE』が用意されています。
118gとかなり重め(通常のCFSより10g以上重い)で、フレックス(硬さ)は1種類。
スペック上は中調子のシャフトなんですが、弾道が低くなるよう、
根元側を柔らかく先端を硬めに設計しているとのことでした。

また、グライドウェッジはロフトによって溝の削り方を変えています。

例えばロフトの寝た番手はインパクトの際にボールがフェースの上を滑ります。
フェースを開いて使った場合は尚更です。
溝の角を他の番手より少しシャープ(通常16度のところを24度に)にすることで、
パフォーマンスの低下を抑えているそうです。

逆にフルショットする機会の多い番手(47度〜54度)は、
溝がシャープ過ぎるとスピン量過多になります。
多すぎるスピン量は吹け上がりの原因になり方向性が失われるため、
これらの番手では溝の角を適正なスピン量が得られる程度に削っているそうです。

上の写真は溝の削り方による打ち出し角とスピン量の違いを表しています。
青い棒グラフは溝の縁を16度にした場合のデータ。
赤い棒グラフは溝の縁を24度にした場合のデータになります。

こうしてみると溝の縁をシャープに(24度に)した方が打ち出し角度が低くなり、
スピン量は多くなる
という結果が出ていることがわかりますね。
こういった特性でメリットを得られるのがロフトの寝た番手です、ということでした。

次はちょっと面白い説明でした。
ヘッドの仕上げ方で疎水性※3が変わるというお話だったんですが、
一世代前のゴージウェッジと今回のグライドウェッジを比較した場合、
グライドウェッジの仕上げ※4の方が疎水性が大きくなっています。

これが一体何を意味するのかと言いますと、
雨で濡れたコンディションでショットした場合のスピン量
に影響してくるんだそうです。

仕上げの違いがスピン量に与える影響は意外と大きく、
ヘッドが濡れた状態で約30%、普通に芝生の上から打つ場合で約20%も、
グライドウェッジの方がゴージウェッジよりスピン量が多くなっているそうです(!)。

また、グライドウェッジのホーゼルは、
先端に向かうにつれて細くなっていくテーパーホーゼルです。

これには、
「重心を低くしすぎないことで吹け上がりを抑え、方向性を安定させる」
「バンカーショット時の砂の抵抗を減らす」
という2つの理由があるのですが、
実はどちらも名器「EYE2ウェッジ」のホーゼルデザインを参考にしているそうです。

フェースを開いて使いやすいよう「ソール・リリーフ」と呼ばれる
特徴的なソールデザインが施されている
のもグライドウェッジの特徴の一つです。
ヒール側のソール形状が非常に複雑な形をしているのがお分かり頂けるでしょうか。
このような形状にすることで、フェースを開いてもエッジを低く保ちやすくなります。

グライドウェッジでは前作同様3種類のソール形状からチョイスできるんですが、
今回ピンは「バウンス角」ではなく「バウンス幅」という概念を提唱しています。

ちなみに「バウンス角」は大きければ大きいほど、
ヘッドが地面に潜りにくくなると言われて
います。
重要な情報ですので覚えておいてくださいね。

図を拡大して見やすくしてみました。
ん?「WS」のバウンス角は「TS」に比べて小さいような気がしますね。
ということは「WS」はバンカーで砂に潜りやすい難しいクラブなのでしょうか?

いえいえ、実はそうではありません。
大事なのはバウンスの角度だけでなく「ソールの幅」!
ソール幅が広いと、ボールの手前にヘッドが入っても
地面で長〜く滑ってくれる
んです。

その結果、フェースが地面に潜り過ぎるのを防止してくれるため、
「WS」は楽にバンカーから出す事のできる易しいソール形状と言えるわけです。
一概にバウンス角だけでクラブの易しさは決められないということですね。

逆に「TS」はバウンス角は大きいですがソール幅は狭くなっています。
狭いソール幅はフェースを開いて高い球を上げたりするのには適しているので、
上級者の方には受けがいいのですが、バウンス角が「WS」並に小さいと…

ヘッドが地面に潜りやすい上、地面で全く滑らずエッジが刺さってしまう

という、とんでもなく難しいクラブになってしまいます。
それを避けるため「TS」ではバウンス角を大きめにしているんですね。

カタログ数値上では「TS」のバウンス角はかなり大きめですが、
実際に球を打った場合の『有効バウンス』は6度位になっているそうです。

ここまでの内容で、
「バウンス角」単独ではクラブの易しさを決定付ける要因たりえない
ということがお分かり頂けたかと思います。

そこでピンが今回提唱しているのが「バウンスの幅」という概念です。
バウンス角やソール幅単独ではクラブの易しさを示す指標になりませんが、
バウンスの幅というのは実にわかりやすい指標になります。
当サイトのグライドウェッジ詳細ページでもバウンス幅を紹介していますので、
ぜひご覧になってみてください。

さて、グライドウェッジ最後の話題が「ヘッドの製造方法」の違いです。

これはこの日の午前中に見学したドルフィン工場の写真ですが、
ソールには蝋でできた台形の『脚』が2つついていますよね?

それに引き換え、2つ上のグライドウェッジの画像には『脚』が1つだけです。

『脚』の数が減れば、人の手で削らなければいけない部分も減ります。
そうすればヘッド重量もばらつき無く安定しますし、ソールの形状が
職人さんによって微妙に異なるということがなくなり
ます。

つまり、品質が安定するわけです。

文章にしてみれば本当にちょっとした変化なのですが、
この変化が作業工程を短縮し、品質を安定させるといった
「縁の下の力持ち」的な役割を果たしているのは言うまでもないでしょう。



他にもグライドウェッジには沢山の話題がありまして、
打感向上のために素材を変更(431ステンレススチールに変更)していたり、
リーディングエッジの形状を微妙に変えていたりします。

また今回のグライドウェッジからはピンの開発担当者が変わったらしく、
古いモデルの良いところも研究して意欲的に取り込んでいったようですね。
改良点があまりに盛り沢山なので紹介する側としては大変なのですが、
それだけ良いものに仕上がっていると思います。
(実際にプロの使用率はとんでもないことになっていますしね)




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