Travel to Arizona 14.

『ゴルフショップオカムラのピンUSA本社取材旅行記 その14』

【パネルで辿るピンの歴史】
エントランスに入り、案内されるがまま通路を進んでいきます。
ビル内だけでも沢山見るものがあったのであまり撮影できませんでしたが、
それでも通路にはかなりの数のパネルが展示されていました。

これはピンファンの間でもあまり知られていないであろう、
「ラピッドファイア」というゴルフボールの弾道測定器です。
現在はこれが更にパワーアップした「スリングマン」という機械を使っているとのこと。

こちらは「ラピッドファイア」の機関部になります。
打ち出し角度やスピン量も調節できたのでしょうか?

これはピン創業者カーステンが初めて作ったプロトタイプのアイアン。
当時のモデルは全て軟鉄鍛造の削りだしでした。
最初のモデルでありながら既にキャビティが彫られていますね。
ヒール・トゥ・バランス理論をアイアンでも再現しようとしているのがわかります。

ちなみに当時の技術では大きなキャビティを彫ることが難しかったようです。
また増え続ける注文依頼に対し、
製造に時間がかかり品質にばらつきのある軟鉄鍛造はデメリットが大きく、
その結果カーステンさんが目を付けたのがステンレス鋳造という方法でした。

とても有名な、三男のジョンさんを手のひらに乗せているカーステンさんの写真。
「ヒール・トゥ・バランス」のデモンストレーションだったそうです。

月日は流れ1967年。カーステンさんと三男ジョンさんの写真です。
カーステンさんが持っているのは初代アンサーアイアン。
そしてジョンさんが持っているのがブロンズのアンサーパターです。
この写真も非常に有名で、色々なところで使われていますね。

この写真はクラブのテストに使われるピンのオリジナルマシーン「ピンマン」が、
テレビ番組に出演し見事ホールインワンした時の記念写真です。
80ヤードの距離をウェッジで打ち、調整を加えながら5回目で成功した※1とのこと。
前日に行われた練習セッションでは8回目で成功したらしいです。

沢山あるパネルを見ながら進んでいくと、こんな扉が。
「Analyzis & Testing Laboratory(分析&テスト研究室)」と書かれたこちらのお部屋、
見学はOKですが内部は一切撮影禁止。

ここでは(これからご紹介していく様々な)テストの結果得られたデータを解析し、
クラブの品質向上に繋げるための研究をしているそうです。
ピンの頭脳といっても過言ではない部署で、部屋の中はコンピュータだらけでした。




【世界最高峰のクラブテストマシーン『PING MAN』登場!】
A&Tラボを出ると、濃厚な1日もようやくスケジュール後半戦。
次はピンが誇る世界最高峰のテストマシーン「PING MAN」の見学です。
半分外と繋がったような明かり取りのある廊下を通り、テストルームへと向かいます。

しかし、管理人はいちいち「ほほぉ〜」と言いながら見ているので、
常に他のグループから遅れ気味の状態です(笑)。
まぁ滅多に来られる場所じゃないのでご勘弁ください(^_^;)。

こちらが「PING MAN」のあるテストルーム。
クラブを構えている機械がピンの開発には欠かせない「PING MAN」です。

ちょっとアングルを変えて。
テスターはダグさん(Mr.Doug)という方ですが、古いカタログで見たことがあるような…

アングル違いをもう1枚。先ほどちょっと話題に出た「スリングマン」もあります。

人間でいう手首にあたる部分をアップで。
「PING MAN」はただクラブを振り回すだけの機械ではなく、
『可能な限り人間の動きを再現するように』作られています。

この複雑な機構は人の手首の動きをそのまま再現するためのもので、
「PING MAN」が他社のテストマシーンと大きく異なるポイントになっているそうです。
「フェースローテーションができるスイングマシン」は世界中見渡してもこの
「PING MAN」くらいらしく、その再現度が開発に大きく影響しているとのことでした。

またテストの際にはタイトリストの「PRO V1」を使用するのですが、
全て新品のボールを使用し、おまけに1度使ったらもう2度と使わない(!)そうです。
一度でも打ったボールは歪みなどがあるため、正しいデータが取れなくなるとのこと。
う〜ん、なんとも贅沢な話です。

さらに「PING MAN」ではフェースのどの部分にボールを当てるのか、
9種類から指定することができるようになっています。
こういった調査ができるようにすることで

「ヒール寄りに当たっても飛距離が落ちない」
「トゥ寄りに当たっても曲がりが小さい」

といった細かなデータ収集ができるわけですね。

クラブのフェースを閉じてフック気味に当てたり、
逆に開いてスライス気味に当てることもできます。
打点やフェースの向き、シャフトの違いにロフトの違いなど、
条件を変えながら途方も無い数のテストをしていくわけです。

余談ですが、カタログに載らないようなマニアックなオプションシャフトでも、
ピンの場合は必ず何千球もテストしてから採用する・しないを決めています。

我々ショップの元にはG30ドライバーに装着可能なシャフトの一覧資料がありますが、
そこに掲載されているのはこのテストを潜り抜けてピンが「OK」を出した、
「精鋭」と呼べるシャフトだけなのです。



せっかくなので、そのハイテクなテストの様子を動画でご覧頂きましょう。
「PING MAN」がボールの位置を細かく調節しているのが確認できますよ。

また、ここにはハイスピードカメラも用意されていました。
フェースにボールが衝突する瞬間を1コマずつ撮影できる超高性能カメラとのこと。
こちらは実際に目でインパクト時のヘッドの挙動・ボールの挙動を
確認したい時に使用するようです。

そしてこちらはボールの打ち出し角・初速・スピン量を
指定して打ち出すことができる「スリングマン(SLING MAN)」です。

スリングマンが最も飛距離の出るデータを算出し、
それに近い値を出せるシャフト・ヘッドの組み合わせを
「PING MAN」で調べるといった形で利用されているようです。
ちなみにスリングマンの裏側はこんな感じでした。
やはりこのページの最初の方で登場した「ラピッドファイア」に近いデザインですね。

テストルームに「レゴ」で作ったピンマンがあったので思わずパチリ。
ピンの社内にはこういう遊び心満載のネタが色々とあるので、
ついつい本筋から離れたものを撮影してしまいますね(^_^;)。




【クラブやバッグの耐久テストはアメリカらしさ満点!】
さて、続いてダグさんが説明してくれたのが、

「商品の耐久テストについて」

です。あまり表に出ない情報だと思うので、こちらも紹介していきますね。

まずは「熱耐久テスト」。
これはアイアンのウェイトやホーゼル部分など、
個々のパーツに対しても行われているようです。
一定以上の熱に耐えられないパーツは容赦なくボツになってしまうとのこと。

続いて「腐食や紫外線に対するテスト」。
下のウェッジの画像はツアーSウェッジのラスティークですね。
このモデルは素材と仕上げの関係上どうしてもサビが発生してしまうのですが、
試作品の段階では腐食耐性があまりに無さ過ぎて色々苦労したようです。

実際に販売されたウェッジでもサビは発生する※2のですが、
この画像の状態に比べたら確かに腐食耐性は向上したのかもしれません(^_^;)。

ただ、ピンの商品といえば「頑丈・長持ち」がモットーということもあってか、
以降のモデルでは従来通りの仕上げに戻していましたね。
オイルカン仕上げ、見た目はアンティークな感じでとても良いんですが…

続いては「物理耐久テスト」。引っ張りやねじれ、折れに対する耐久力を調べています。
ホーゼルとフェラル(ホーゼルにかぶせる黒いキャップ)の間に隙間ができるのは、
現在でもたまにありますね。それでも以前に比べるとかなり頻度は落ちてきました。
蓄積したデータが商品作りに反映されてきているのかもしれません※3

そして…

最後はその名も「Bag Drop」という名の耐久テストです。
レッグ付きバッグにクラブを入れた状態で、
上からの押し潰しにどこまで耐えられるかというものなのですが、
いやはや、なかなかインパクトのあるテストです。

ピンのゴルフバッグは頑丈さに定評があり、
アメリカでは多くのゴルフ部でピンのバッグが採用されています。
何を隠そう管理人のキャディバッグも10数年前のフーファーでして、
ところどころボロボロになってはいるものの、構造は全くヘタれていません。
この辺は質実剛健なアメリカらしいなと思いますね。

その他にもシャフトの耐久テストやアイアンフェース面の耐久テストなど、
商品として世に出る前に様々なテストが行われるとのことでした。
日本と違ってアメリカはモノの扱いが荒い(特に運送会社)ので、
これだけ念入りの耐久度チェックしてちょうど良いくらいなのだと思います。

最後に「PING MAN」や「SLING MAN」の機能を丁寧に教えてくれたダグさんとパチリ。

いつもアメリカのCMで見るばかりだったPING MANと会うことができ、
管理人も嬉しかったですね。いい思い出になりました。

さて、次に向かうのは更にハイテクな「モーションキャプチャールーム」。
人の体の動きをスキャンしてそれをクラブ作りに活かそうと考えている、
開発チームの中でも専門性の強い部署です。
一体どんな話が聞けるのでしょうか?




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